特定技能・分野別運用方針「⑦造船・舶用分野」
目次
特定技能外国人の雇用が可能な業種は、国が特定産業分野に指定した12業種になります。
全ての分野共通の基準とは別に、それぞれの分野で固有の基準が設けられています。
では、業種別に詳細を確認していきましょう!
今回は「造船・舶用分野」の基準について紹介します。
造船・舶用分野の現状
造船・舶用工業は、四面を海に囲まれた我が国にとって不可欠な海上輸送に要する船舶を安定的に供給し、また、裾野が広い労働集約型産業として地域の経済・雇用にも貢献している非常に重要な産業です。
造船・舶用工業の国内生産拠点は殆どが地方圏に存在しており、少子高齢化・急激な生産年齢人口減少に加えて、若者の地方から都市部への流出により、日本人の若手就労者の確保に苦労している状況です。
2023年(令和5年)の人手不足見込みについては、交通政策審議会の答申に掲げられた我が国造船・舶用工業の目標「2025年の世界の新造船建造量のシェア3割を獲得」を達成するために必要となる労働力等から算定し、2万2,000人程度の人手不足が生じると推計しています。
女性が働きやすい職場環境の改善や、多様な勤務形態での高齢者雇用等も積極的に取り組んでいますが、人手不足はとても深刻です。
特定技能「造船・舶用分野」では、2号特定技能外国人を受け入れる事が可能です。(溶接のみ)
特定技能「造船・舶用分野」の基準
造船・舶用分野における基準や業務内容、特定技能外国人に求められる水準についてご紹介します!
雇用形態について
特定技能外国人を「造船・舶用分野」で雇用する方法は、直接雇用のみとなります。
※派遣による受け入れは認められておりません。
受け入れ人数について
造船・舶用分野では、受入れ機関ごとの受入れ人数に制限はありません。
特定技能外国人が従事する業務内容について
特定技能外国人が「造船・舶用分野」で従事する業務内容は、以下になります。
①溶接 ②塗装 ③鉄工 ④仕上げ ⑤機械加工 ⑥電気機器組立て
各業務毎に試験が異なるので、注意が必要です。
同じ業務内容の日本人が、通常従事する事となる関連業務に付随的に従事することは問題ありません。
※専ら関連業務に従事することは認められません。
関連業務の一例:
①読図作業
②作業工程管理
③検査(外観・寸法・材質・強度・非破壊・耐圧気密等)
④機器・装置・工具の保守管理
⑤機器・装置・運搬機の運転
⑥資材の材料管理・配置
⑦部品・製品の養生
⑧足場の組立て・解体
⑨廃材処理
⑩梱包・出荷
⑪資材・部品・製品の運搬
⑫入出渠
⑬清掃
技能水準について
特定技能「造船・舶用分野」で求められる人材の技能水準は、以下のいずれかを満たしている者となります。
①技能試験 「造船・舶用工業分野特定技能1号試験」に合格
②技能実習2号を良好に修了(修得した技能が、従事する技能と関連性が認められる場合)
下記別表に記載された職種・作業の技能実習2号を良好に修了した者については、必要な技能の水準を満たしているものとして、修得した技能と具体的な関連性が認められる業務区分の造船・舶用工業分野特定技能1号評価試験が免除となります。
造船・舶用工業分野特定技能1号試験とは
造船・舶用工業分野特定技能1号試験は、日本の造船・舶用工業分野で特定技能1号の在留資格で就労を希望する外国人に対して、技能の水準を評価する試験です。
実施方法:学科試験、実技試験
実施方式:学科試験…ペーパーテスト方式
実技試験…作業試験、判断試験等から職種毎に定める
受験資格:満17歳以上
試験区分:6区分(溶接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立て)
合否基準:学科試験…正答率60%以上
実技試験…各業務区分毎に合否基準が異なる
各業務ごとに試験の合格が必要です。例えば、「溶接」の試験しか合格していない特定技能外国人に「機械加工」の業務をさせる事は出来ません。
業務区分ごとの試験詳細はこちら
「造船・舶用工業分野特定技能1号試験の実施について」ClassNK
2号特定技能外国人に求められる水準
①複数の作業員を指揮・命令・管理する監督者としての実務経験
②造船・舶用工業分野特定技能2号試験(溶接)合格
2号特定技能は、在留期間の更新に上限はなく、扶養する家族の帯同も可能です。
日本語能力水準について
特定技能「造船・舶用分野」で求められる人材の日本語能力水準は、以下になります。
「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」合格
職種・作業の種類にかかわらず、技能実習2号を良好に修了した者は、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力水準を有する者と評価され、国際交流基金日本語基礎テスト及び日本語能力試験(N4以上)のいずれの試験も免除されます。
造船・舶用分野の受け入れ機関にのみ定められている特徴的な基準
特定産業分野14業種の中で、造船・舶用分野にのみ定められている特徴的な基準があります。
①造船・舶用工業分野に係る事業を営む者である事
②造船・舶用工業分野特定技能協議会への加入
では、確認して行きましょう!
①造船・舶用工業分野に係る事業を営む者である事
受入企業が造船・舶用工業分野に係る事業を営む者である事について国土交通省の確認を受ける必要があります。
【1】造船業
1.造船法(昭和25年法律第129号)第6条第1項第1号又は第2号の届出を行っている者
2.小型船造船業法(昭和41年法律第119号)第4条の登録を受けている者
3.上記1又は2の者からの委託を現に受けて船体の一部の製造又は修繕を行う者
【2】舶用工業(【1】に該当する者を除く。)
1.造船法第6条第1項第3号又は第4号の届出を行っている者
2.船舶安全法(昭和8年法律第11号)第6条の2の事業場の認定を受けている者
3.船舶安全法第6条の3の整備規程の認可を受けている者
4.船舶安全法第6条の3の事業場の認定を受けている者
5.船舶安全法第6条の4の型式承認を受けている者
6.海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)の規定に基づき、上記2から5までに相当する制度の適用を受けている者
7.産業標準化法(昭和24年法律第185号)第30条第1項の規定に基づき、部門記号Fに分類される鉱工業品に係る日本産業規格について登録を受けた者の認証を受けている者
8.船舶安全法第2条第1項に掲げる事項に係る物件(構成部品等を含む。)の製造又は修繕を行う者
9.造船造機統計調査規則(昭和25年運輸省令第14号)第5条第2号に規定する船舶用機関又は船舶用品(構成部品等を含む。)の製造又は修繕を行う者であって同規則に基づき調査票の提出を行っているもの
10.上記以外で、1から9までに規定する者に準ずるものとして国土交通省海事局船舶産業課長が認める者
②造船・舶用工業分野特定技能協議会への加入
初めて造船・舶用工業分野において1号特定技能外国人の支援を実施する場合は、1号特定技能外国人の入国後4か月以内に造船・舶用工業分野特定技能協議会に加入する必要があります。
入国後4か月以内に協議会に加入していない場合、協議会に対し必要な協力を行わない場合には、特定技能外国人の受入れができないこととなります。
協議会は、その構成員が相互の連絡を図ることにより、外国人の適正な受入れ及び外国人の保護に有用な情報を共有し、その構成員の連携の緊密化を図ります。
また、特定技能所属機関は以下の事項等について必要な協力を行います。
① 特定技能外国人の受入れに係る状況の全体的な把握
② 問題発生時の対応
③ 法令遵守の啓発
④ 特定技能所属機関の倒産時等における特定技能外国人に対する転職支援
⑤ 就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報の把握・分析
詳細はこちら👉「造船・舶用工業分野特定技能協議会規約」国土交通省
まとめ
今回は特定技能「造船・舶用分野」の基準について、紹介しました。
海に囲まれた我が国にとって不可欠な海上輸送に要する船舶を安定的に供給し、また、裾野が広い労働集約型産業として地域の経済・雇用にも貢献している非常に重要な産業である「造船・舶用分野」。
深刻化する人手不足に対応し、造船・舶用工業の基盤を維持・発展させていく為にも、即戦力となる特定技能外国人の活躍が期待されますね!
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参考:
「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -造船・舶用工業分野の基準について-」法務省・国土交通省
「造船・舶用工業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」法務省
「造船・舶用工業分野特定技能1号試験」ClassNK
「造船・舶用工業分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」)」国土交通省