特定技能・分野別運用方針「⑥建設分野」
特定技能外国人の雇用が可能な業種は、国が特定産業分野に指定した12業種(製造3分野は統合)になります。
全ての分野共通の基準とは別に、それぞれの分野で固有の基準が設けられています。
では、業種別に詳細を確認していきましょう!
今回は「建設分野」の基準について紹介します。
建設分野の現状
建設分野では深刻な人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材確保の為の様々な取組を行っております。
技術導入、人材育成の強化、建設生産・管理システムのあらゆる段階におけるICT等の活用、公共工事設計労務単価の引上げ、社会保険の加入徹底等による建設技能者の処遇改善に向けた取組のほか、建設業の魅力を積極的に発信し、建設業を希望する入職者を増やす取組を行っており、例えば、新規学卒者の建設技能者を含めた建設業入職者数は、平成24年の約3.3万人から平成29年は約4万人に増加するなど、増加が確認されています。
建設キャリアアップシステムの活用等によって建設技能者の就業履歴や保有資格を業界横断的に蓄積し、適正な評価と処遇につなげる取組を更に進めるとともに、適正な工期設定・施工時期の平準化等による長時間労働の是正等、建設業における働き方改革についても推進する事としています。
国土交通省は、建設分野での特定技能外国人は、2020年度に1165件(企業数)を新たに認定し、受け入れ計画に基づく受け入れ人数(認定人数)は2,741人となり、制度創設初年度からの累計が3,000人を超えました。 認定人数の内訳は、技能実習生からの移行が2,165人、外国人建設就労者(特定活動)からの移行が566人、試験合格者が10人となります。 |
様々な取組を進めており、一定の成果も確認されているのにも関わらず人手不足は深刻です。
厚生労働省が発表している、職業別一般職業紹介状況(令和3年2月分)によると、建設分野の有効求人倍率は4.17倍となっております。
全体の有効求人倍率の1.09倍と比べると、建設分野の有効求人倍率は非常に高い事がわかります。
特定技能「建設分野」では、2号特定技能外国人を受け入れる事が可能です。
特定技能「建設分野」の基準
建設分野における基準や業務内容、特定技能外国人に求められる水準についてご紹介します!
雇用形態について
特定技能外国人を「建設分野」で雇用する方法は、直接雇用のみとなります。
※派遣による受け入れは認められておりません。
受け入れ人数について
特定技能「建設分野」には、建設現場において受け入れ人数の上限が定められています。
1号特定技能外国人の総数と外国人建設就労者の総数の合計が、受け入れ企業の常勤職員の総数までは受け入れることが可能です
特定技能外国人が従事する業務内容について
特定技能外国人が「建設分野」で従事する業務内容は、以下になります。
①型枠施工 ②左官 ③コンクリート圧送 ④トンネル推進工 ⑤建設機械施工 ⑥土工 ⑦屋根ふき
⑧電気通信 ⑨鉄筋施工 ⑩鉄筋継手 ⑪内装仕上げ ⑫表装 ⑬とび ⑭建築大工 ⑮配管
⑯建築板金 ⑰保温保冷 ⑱吹付ウレタン断熱 ⑲海洋土木工
同じ業務内容の日本人が、通常従事する事となる関連業務に付随的に従事することは問題ありません。
※専ら関連業務に従事することは認められません。
関連業務の一例:
①作業の準備・運搬・後片付け等
②安全衛生作業(点検、整理整頓、清掃等)
各職種において作業内容は異なります。
詳しくはこちら👉「運用要領(ガイドライン)」国土交通省
※除草・除雪などの建設工事には該当しない業務も関連業務に含まれます。
技能水準について
特定技能「建設分野」で1号特定技能外国人に求められる技能水準は、以下のいずれかを満たしている者となります。
①技能試験 「建設分野特定技能1号評価試験」に合格
②技能実習2号を良好に修了(修得した技能が、従事する技能と関連性が認められる場合)
下記別表に記載された職種・作業の技能実習2号を良好に修了した者については、業務で必要とされる一定の専門性・技能を有し、即戦力となるに足りる相当程度の知識または経験を有するものと評価され、修得した技能と具体的な関連性が認められる業務区分の建設分野特定技能1号評価試験が免除となります。
また、在留資格「特定活動」で就労中の外国人建設就労者についても、技能実習2号を良好に修了したことを前提としているので、試験免除で在留資格「特定活動」から在留資格「特定技能1号」に変更することが出来ます。
※同じ職種への移行に限ります。
建設分野特定技能1号評価試験とは
試験水準は技能検定3級相当の水準で、初級の技能者が通常有すべき技能と知識を問うものです。
実施方法:学科試験、実技試験
実施方式:学科試験…コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式
実技試験…作業試験、判断試験等から職種毎に定める
受験資格:満17歳以上
試験区分:18区分(型枠施工、左官、コンクリート圧送、トンネル推進工、建設機械施工、土工、屋根ふき、電気通信、鉄筋施工、鉄筋継手、内装仕上げ/表装、とび、建築大工、配管、建築板金、保温保冷、吹付ウレタン断熱、海洋土木工)
合否基準:学科試験…合格点の65%以上
実技試験…登録法人が定める基準点
2号特定技能外国人に求められる水準
①建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験
②「建設分野特定技能2号評価試験」または「技能検定1級」に合格
特定技能2号は、在留期間の更新に上限はなく、扶養する家族の帯同も可能です。
日本語能力水準について
特定技能「建設分野」で求められる人材の日本語能力水準は、以下になります。
「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」合格
職種・作業の種類にかかわらず、技能実習2号を良好に修了した者は、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力水準を有する者と評価され、国際交流基金日本語基礎テストおよび日本語能力試験(N4以上)のいずれの試験も免除されます。
建設分野の受け入れ機関にのみ定められている特徴的な基準
特定産業分野14業種の中で、建設分野の受け入れ機関にのみ定められている特徴的な基準は以下になります。
①建設特定技能受入計画の認定
②建設業法第3条の許可
③建設キャリアアップシステムへの登録
④一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)への加入
⑤国内人材確保の取組
⑥特定技能外国人への報酬や昇給が適切である
⑦契約上の重要事項の事前説明
⑧安全衛生教育または技能講習に関する講習や研修
⑨巡回指導の受け入れ
では、確認していきましょう。
①建設特定技能受入計画の認定
建設分野において1号特定技能外国人を受け入れる場合には、国土交通大臣による建設特定技能受入計画の審査・認定を受る必要があります。
1号特定技能外国人の特定技能所属機関には、認定計画を適正に実施していることについて国土交通省又は適正就労監理機関の確認を受けること及び国土交通省が行うその他の調査・指導に協力することが求められます。
この調査・指導に対して協力を行わない場合には、特定技能外国人の受入れはできません。
②建設業法第3条の許可
建設分野において特定技能外国人を受け入れる場合には、建設業法第3条の許可(建設業許可)を受けている必要があります。
軽微な建設工事(税込500万円未満)しか行わない業者も、特定技能外国人を受け入れる場合は、許可を受ける必要があります。
③建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録
特定技能所属機関になろうとする者は、あらかじめ建設キャリアアップシステムに登録する必要があります。
建設技能者の氏名等の基本的な情報から、保有資格や実務経験等も登録されます。
経験や知識・技能、マネジメント能力に応じてレベル1から4のカードが発行され、能力が上がるとレベルも上がり、カードの色が変わるシステムです。
建設キャリアアップシステムを活用することで、特定技能外国人に対する、日本人と同様の客観的基準に基づく技能と経験に応じた賃金支払の実現や、工事現場ごとの特定技能外国人の在留資格・安全資格・社会保険加入状況の確認、不法就労の防止等の効果が得られます。
詳しくはこちら→建設キャリアップシステム
④一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)への加入
建設分野において1号特定技能外国人を受け入れる企業は、(一般社団法人)建設技能人材機構(JAC)へ直接または間接的に加入する必要があります。
JACの正会員団体に所属している建設企業は、間接的に加入しているとみなされます。
◆一般社団法人 建設技能人材機構(JAC) 建設分野における外国人の適切かつ円滑な受け入れを実施する為に建設業者団体等が共同で設立した法人。 劣悪な労働環境、低賃金、保険未加入等のルールを守らないアウトサイダーやブラック企業の排除、就職の斡旋などを行っている。 |
⑤国内人材確保への取組
特定技能制度は、生産性向上や国内人材確保の取組を行ってもなお、人材を確保することが困難な状況にあるため必要と認められる場合に限って外国人材の受入れを可能とするものです。
国内で人材の確保に係る相応の努力を行っているか、職員に対する処遇をおろそかにしていないか、適正な労働条件による求人の努力を行っているか、について審査をします。
直近1年以内にハローワークで求人した際の求人票や、すでに雇用している日本人技能者の経験年数及び報酬額確認した結果、適切な雇用条件(処遇等)での求人が実施されていない場合や、既に雇用している職員の報酬が経験年数等を考慮した金額であることが確認できない場合は認定されません。
⑥特定技能外国人への報酬や昇給が適切である
特定技能外国人の報酬額が同等の技能を有する日本人と同等額以上である必要があります。 なお、同等の技能を有する日本人の処遇が低い場合は、処遇改善等、国内人材確保に向けた取組を行っていないと判断されます。
比較対象となる日本人の技能者がいない場合、就業規則や賃金規程に基づき、3~5年程度の経験を積んだ者に支払われるべき報酬の額を提示することや、周辺地域における建設技能者の平均賃金や設計労務単価等を根拠として提示する等,適切な報酬予定額の設定がされていることを説明する必要があります。
特定技能外国人に対しては月給制による報酬の支払が求められます。建設業では日給制を採用する企業も多く見られますが、季節や工事受注状況によりあらかじめ想定した報酬予定額を下回ることもあり、特定技能外国人の就労意欲の低下や失踪等を防ぐためにも、安定的な月給制が取られております。
1カ月あたりの所定労働日数・労働時間が変動したりする場合も、「1カ月単位で算定される額」で報酬を支給しなければなりません。
実務経験年数、資格・技能検定を取得した場合などに応じて、昇給を行うことが必要です。
また、賞与、各種手当や退職金についても日本人と同等に支給する必要があり、特定技能外国人だけが不利になるような条件は認められません。
⑦契約上の重要事項の事前説明
特定技能所属機関は、1号特定技能外国人に支払われる報酬予定額や業務内容等について、事前に1号特定技能外国人が十分に理解することができる言語を用いて説明し、重要事項について理解していることを確認する必要があります。
高所からの墜落・転落災害、車両系建設機械等によるはさまれ・巻き込まれ等のおそれのある業務、化学物質、電離放射線等にばく露するおそれのある業務など危険・有害な業務に従事させる可能性がある場合には、健康上のリスクとその予防方策について具体的かつ丁寧に説明を行い、1号特定技能外国人から理解・納得を得る必要があります。
※送り出し国によっては、従事させる事が出来ない業務もあります。
説明は直接対面、テレビ電話等で行うことも可能であり、説明時に通訳の方が同席することは問題ありません。
⑧安全衛生教育または技能講習に関する講習や研修
特定技能外国人に従事させようとする業務に必要となる安全衛生教育の内容が満たされていない場合、国土交通省から指導を受ける事があります。
危険または有害な業務に特定技能外国人を従事させる場合には、雇い入れ時等の安全衛生教育や特別教育等において、業務に伴う労働災害発生のおそれとその防止対策等について正確に理解させる必要があります。
国土交通大臣が、1号特定技能外国人の受入れ後に受講すべき講習または研修を指定した場合、特定技能所属機関は、1号特定技能外国人に対し、受入れ後講習を受講させることが必要になります。
計画の真正性確認や母国語相談ホットライン窓口、転職支援等の仕組みの情報提供など、1号特定技能外国人として働くに当たって必要な知識・情報等を提供する事を目的として行うものです。
特定技能所属機関は、1号特定技能外国人の受入れ後3か月以内に、この講習を受講させることが必要です。
受講のための旅費、受講料などの費用負担は、特定技能所属機関が負担することになります。
⑨巡回指導の受け入れ
1号特定技能外国人の特定技能所属機関には、認定計画を適正に実施していることについて国土交通省または適正就労監理機関の確認を受けることおよび国土交通省が行うその他の調査・指導に協力することが求められます。
適正就労監理機関が1号特定技能外国人の受入企業を訪問し、建設特定技能受入計画等にしたがって
適正な受入れが実施されているかを次のとおり確認し、必要な指導・助言を行います。
・受入れ責任者・担当者の方からのヒアリング
・賃金台帳、出勤簿等の書面の確認
・特定技能外国人のみなさんとの母国語での面談
正当な理由なく、適正就労監理機関の巡回訪問・質問に対して非協力的な態度を取ることや不誠実な対応を取ることは、1号特定技能外国人の適正な就労環境の確保を妨げる行為であり、国土交通大臣による報告の徴収、指導の対象または特定技能所属機関の基準に適合しないこととなります。
参考:「特定技能 巡回訪問」一般財団法人国際建設技能振興機構(FITS)
◆適正就労監理機関 1号特定技能外国人の適正な就労環境の確保するため、認定計画にしたがって適切な受入れが実施されているかの確認、建設分野で働く特定技能外国人への必要な指導・助言を行う機関 |
受け入れ事例紹介動画
出入国管理庁が公開している「建設分野」の受け入れ事例インタビュー動画です。
コンセプト動画
「建設分野」において、特定技能外国人の受入れを検討している建設企業の方々に向けたコンセプト映像です。
国土交通省が公開しています。
まとめ
今回は特定技能「建設分野」の基準について、紹介しました。
他の分野に比べて特徴的な基準も多く、細かく定められていた建設分野。
人材確保の為に様々な取り組みを行い、一定の成果が確認されているにも関わらず、
深刻な人手不足の状況にある建設分野の基盤を存続・発展させていく為にも、
即戦力となる特定技能外国人の活躍が期待されますね!
NES(ネバーエンディングスピリッツ)協同組合では「特定技能者で働きたい外国人の方」と「特定技能者を採用したい企業やお店」のマッチングをお手伝いします。お気軽にご相談下さい!
参考:
「建設分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」)Q&A」国土交通省
「建設分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」国土交通省
「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -建設分野の基準について-」法務省・経済産業省
「建設分野における特定技能外国人制度の概要」国土交通省