二国間協定(二国間取決め)とは?
目次
今回は、前回までのブログでも何度か登場した「二国間協定(二国間取決め)」について、目的や手続き方法も含め紹介します。
二国間協定(二国間取決め)とは
特定技能の二国間協定とは、日本が外国人労働者を送り出す国と締結している取り決めです。
協力覚書(MOC:Memorandum of Cooperation)とも呼ばれます。
外国人労働者の送出し・受入れを適正かつ円滑にするためのものです。
なお、二国間協定を締結していない国から人材を受け入れることも可能です。
二国間協定(二国間取決め)のポイント
二国間取決めのポイントは2つ。
①情報共有
特定技能外国人の円滑・適正な送出し・受入れの確保等のために必要または有益な情報を速やかに共有する。この情報には,特定技能外国人に係る求人・求職に関与する両国内の機関による以下の行為に関する情報を含む。
・保証金の徴収 ・違約金の定め ・人権侵害行為
・偽変造文書等の行使及び費用の不当な徴収等
②問題是正のための協議
定期又は随時に協議を行い,本制度の適正な運用のために改善が必要と認められる問題の是正に努める。
要は、日本と特定技能外国人を送り出す国との間で、保証金を徴収するなどの悪質な仲介事業者(ブローカー)等を排除し、外国人労働者の保護を目的とするための協力覚書です。
二国間協定(二国間取決め)を結んでいる国
2021年4月2日時点で、日本と特定技能についての二国間協定を結んでいる国は以下の13カ国です。
・フィリピン
・カンボジア
・ネパール
・ミャンマー
・モンゴル
・スリランカ
・インドネシア
・ベトナム
・バングラデシュ
・ウズベキスタン
・パキスタン
・タイ
・インド
協定の内容はそれぞれの国ごとに異なります。
雇用する特定技能外国人の方の国との協定事項の確認は必須です。
各国それぞれの手続きの流れや詳細、特徴的な手続きを紹介します。
フィリピン
締結日:2019/03/19
フィリピン国籍の方を特定技能外国人として受け入れる場合、
①フィリピン政府から認定を受けた送出機関との募集取決め(Recruitment Agreement)の締結
②駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所(POLO)への申請手続
③フィリピン海外雇用庁(POEA)への特定技能所属機関としての登録手続
が必要となります。
上記①~③の手続きをせずに、フィリピン国籍の方と雇用契約を結ぶ事は出来ません。
フィリピン国籍の方が特定技能外国人として出国するには、海外雇用許可書(OEC)の取得が必要ですが、OECを取得するためには上記の①から③の手続を完了していることが前提とされており、手続を完了していない場合、OECが発行されず、これから雇用を予定している方あるいは再入国許可により一時帰国している方が来日できなくなります。
フィリピン側は、在留資格認定証明書の交付申請手続(フィリピンから新たに受け入れる場合)及び在留資格変更許可申請手続(日本に在留する方を受け入れる場合)を行う前に、受入機関の方が,まず上記の①から③の手続を済ませることが必要であるとしています。
フィリピンとの特定技能に関する協力覚書はこちら
フローチャート:フィリピン特定技能外国人に係る手続の流れについて
手続きの詳細:フィリピン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
Q&A:フィリピン側の手続に関するQ&A
カンボジア
締結日:2019/03/25
カンボジア国籍の方をカンボジアから新たに特定技能外国人として受け入れるに当たって、カンボジアの制度上、カンボジア政府から認定を受けた現地の送出機関を通じて、人材の紹介や雇用契約の締結を求められます。
特定技能外国人として来日を希望するカンボジア国籍の方は、認定送出機関を通じて、この方に対する登録証明書の発行をカンボジア労働職業訓練省(MoLVT:Ministry of Labour and Vocational Training)に対して申請することが求められます。
カンボジアとの特定技能に関する協力覚書はこちら
フローチャート:カンボジア特定技能外国人に係る手続の流れについて
手続きの詳細:カンボジア国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
ネパール
締結日:2019/03/25
ネパールについては、特定技能外国人の雇用に当たり、日本の受入機関がネパール国籍の方に対して直接採用活動を行うほか,受入機関は,駐日ネパール大使館に求人申込を提出することも可能とのことです(有料)。
特定技能外国人として来日を希望するネパール国籍の方は、ネパール出国前に海外労働保険への加入や海外労働者社会福祉基金への一定額の支払いを求められます。
他にも、ネパール労働・雇用・社会保障省海外雇用局日本担当部門から海外労働許可証を取得し、ネパールを出国する際、出国審査において海外労働許可証の確認が必要となります。
ネパールとの特定技能に関する協力覚書
フローチャート:ネパール特定技能外国人に係る手続の流れについて
手続きの詳細:ネパール国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
ミャンマー
締結日:2019/03/28
ミャンマー国籍の方をミャンマーから新たに特定技能外国人として受け入れるに当たって、ミャンマーの制度上、ミャンマー政府から認定を受けた現地の送出機関を通じて、人材の紹介や雇用契約の締結を求められます。
また、送出機関が求人を行う際は、受入機関から提出された求人票をミャンマー労働・入国管理・人口省(MOLIP:Ministry of Labour, Immigrationand Population)に提出し,求人票の許可・承認を得る必要があります。
※ミャンマー政府から認定を一定期間無効とされている認定送出機関があります→こちら
特定技能外国人として来日予定のミャンマー国籍の方は、ミャンマーの制度上、海外で就労する場合にはMOLIPに海外労働身分証明カード(OWIC:Overseas Worker Identification Card)の申請を行う必要があります。
ミャンマーとの特定技能に関する協力覚書
フローチャート:ミャンマー特定技能外国人に係る手続の流れについて
手続きの詳細:ミャンマー国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
モンゴル
締結日:2019/04/17
モンゴル国籍の方を新たに特定技能外国人として受け入れるに当たっては、モンゴル労働・社会保障省労働福祉サービス庁(GOLWS)との間でモンゴル国籍の方の人材募集に関して双務契約の締結が求められます。ただし、日本に在住するモンゴル国籍の方を雇用する場合には、双務契約の締結は不要です。
モンゴルとの特定技能に関する協力覚書
フローチャート:モンゴル特定技能外国人に係る手続の流れについて
手続きの詳細:モンゴル国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
Q&A:モンゴル側の手続に関するQ&A
スリランカ
締結日:2019/06/19
スリランカについては、特定技能外国人を受け入れるに当たって、必ずしもスリランカ政府が認定した送出機関を利用する必要はありません。
特定技能外国人として来日を希望するスリランカ国籍の方は、スリランカ海外雇用促進·市場多様化担当国務省海外雇用局(SLBFE)に対し、海外労働登録を行う必要があります。
スリランカとの特定技能に関する協力覚書
フローチャート:スリランカ特定技能外国人に係る手続の流れについて
手続きの詳細:スリランカ国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
インドネシア
締結日:2019/06/25
インドネシア国籍の方を受け入れようとする日本側の求人募集に当たり、インドネシア側は同国政府が管理する「労働市場情報システム(IPKOL)」へのオンライン登録を強く希望しています。特定技能制度に興味のあるインドネシア国籍の方は多く、日本での就職を希望している方は、このIPKOLにアクセスして求職先を検索するからです。
在留資格「特定技能」に係る在留資格認定証明書を交付されたインドネシア国籍の方は、自らインドネシア政府が管理する海外労働者管理システム(SISKOTKLN)にオンラインで登録し、発行されるID番号を取得する必要があります。
インドネシアとの特定技能に関する協力覚書
フローチャート:インドネシア特定技能外国人に係る手続の流れについて
手続きの詳細:インドネシア国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
Q&A:インドネシア側の手続に関するQ&A
ベトナム
締結日:2019/07/01
ベトナムから新たに特定技能外国人として受け入れるに当たっては、ベトナムの制度上、ベトナム労働・傷病兵・社会問題省海外労働管理局(DOLAB)から認定された送出機関との間で「労働者提供契約」を締結することが求められます。
ベトナムについては、協力覚書において、同国の関連法令に基づき必要な手続を完了した特定技能外国人に対し、ベトナム政府が推薦者表(特定技能外国人表)を承認することとされています。
推薦者表の承認については、ベトナムにいる方を新たに特定技能外国人として受け入れる場合は、送出機関がDOLABにおいて手続を行い、日本に在留するベトナム人の方を特定技能外国人として受け入れる場合は、本人または受入れ機関等が駐日ベトナム大使館において手続きを行います。
ベトナムとの特定技能に関する協力覚書
フローチャート:ベトナム特定技能外国人に係る手続の流れについて
手続きの詳細:ベトナム国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
バングラデシュ
締結日:2019/08/27
バングラデシュについては、特定技能外国人を受け入れるに当たって、必ずしもバングラデシュ政府が認定した送出機関を利用する必要はありません。
ウズベキスタン
締結日:2019/12/17
ウズベキスタンについては、特定技能外国人を受け入れるに当たって、必ずしもウズベキスタン政府が認定した送出機関を利用する必要はありません。(送出機関の利用は任意)
ウズベキスタンとの特定技能に関する協力覚書
フローチャート:ウズベキスタン特定技能外国人に係る手続の流れについて
手続きの詳細:ウズベキスタン国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
パキスタン
締結日:2019/12/23
パキスタンについては、特定技能外国人を受け入れるに当たって、必ずしもパキスタン政府が認定した送出機関を利用する必要はありません。(送出機関の利用は任意)
タイ
締結日:2020/02/04
タイについては、特定技能外国人を受け入れるに当たって、必ずしもタイの国外職業紹介事業者(送出機関)を利用する必要はありません。
ただし、日本企業が現地へ訪れて直接求人活動を行うこと禁止されています。
タイとの特定技能に関する協力覚書
フローチャート:タイ特定技能外国人に係る手続の流れについて
手続きの詳細:タイ国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
Q&A:タイ側の手続に関するQ&A
インド
締結日:2021/01/18
インドとの特定技能に関する協力覚書
フローチャート:インド特定技能外国人に係る手続の流れについて
手続きの詳細:インド国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
まとめ
今回は「二国間協定(二国間取決め)とは?」について紹介しました。
全ての国の協力覚書には「両国の書面に よる同意により、必要に応じて修正又は補足される」と言う記載があります。
今後の状況によって内容が変わる可能性もあるので、特定技能外国人を雇用する際には最新情報の確認が必要ですね!
最新情報、各国別の手続き方法の詳細はこちら→「特定技能に関する二国間の協力覚書」法務省
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参考:「特定技能に関する二国間の協力覚書」出入国在留管理庁(http://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri05_00021.html)