特定技能外国人を雇用するために必要な事とは?Vol.3:1号特定技能外国人支援計画
目次
前回は「特定技能雇用契約」について紹介しました。
特定技能外国人を雇い入れる為には「特定技能所属機関」になる必要があり、特定技能外国人との間で「特定技能雇用契約」を結ぶ必要がありました。
さて今回は「特定技能外国人を雇用するために必要な事」の3番目となる
「1号特定技能外国人支援計画」について紹介します。
1号特定技能外国人支援計画とは
特定技能所属機関は、受け入れる1号特定技能外国人に対して職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援を行う必要があります。そのため、特定技能所属機関は、適切な内容の「支援計画」の作成が求められます。
支援計画は、日本語及び1号特定技能外国人が十分理解できる言語(特定技能外国人の母国語又は内容を余すことなく理解出来る言語)で作成する必要があります。
もちろん、1号特定技能外国人に対する支援を行う際も同様です。
1号特定技能外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制を有していることも特定技能所属機関としての基準の一つです。
1号特定技能外国人支援計画の一部又は全部は「登録支援機関」に委託することも可能です。
※登録支援機関については、次回ブログで紹介しております!
◆登録支援機関 特定技能所属機関との委託契約により、1号特定技能外国人支援の計画・実施を行う機関。 |
1号特定技能外国人支援計画の内容
1号特定技能外国人支援計画は、以下が基準とされています。
①事前ガイダンスの提供 |
②出入国する際の送迎 |
③適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援 |
④生活オリエンテーションの実施 |
⑤日本語学習の機会の提供 |
⑥相談又は苦情への対応 |
⑦日本人との交流促進に係る支援 |
⑧外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援 |
⑨定期的な面談の実施、行政機関への通報 |
⑩過去2年間に中長期在留者等(就労系資格に限る)の受入れ経験等がある事 |
では、一つずつ確認して行きましょう!
①事前ガイダンスの提供
事前ガイダンスは、対面やテレビ電話などで行います。文書や電子メールのみはNGです。
「事前」ガイダンスなので、雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請「前」におこなわれます。
以下の10項目が情報提供の内容です。
a.従事する業務の内容,報酬の額 その他の労働条件に関する事項
b.本邦において行うことができる活動の内容
c.入国に当たっての手続に関する
d.保証金の徴収,契約の不履行についての違約金契約等の締結の禁止
e.入国の準備に関し外国の機関に支払った費用について,当該費用の額及び内訳を十分に理解して支払わなければならないこと
f.支援に要する費用を負担させないこととしていること
g.入国する際の送迎に関する支援の内容
h.住居の確保に関する支援の内容
i.相談・苦情の対応に関する内容
j.特定技能所属機関等の支援担当者氏名及び連絡先
引用:「特定技能所属機関による支援計画変更に係る届出」法務省
②出入国する際の送迎
1号特定技能外国人が出入国する場合、空港等から自宅や会社への送迎が必要になります。交通費も特定技能所属機関が負担します。
出国する際は、空港等までの送迎だけではなく保安検査場入場までの出国手続の補助も必要です。
③適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援
1号特定技能外国人が日本で安心して働く為に、住居の確保が必要です。
広さは,1人 当たり 7.5 m²(約4畳)以上を満たすことが求められます 。
「適切な住所の確保に係る支援」
・不動産仲介事業者や賃貸物件の情報を提供し,必要に応じて住宅確保に係る手続に同行し,住居探しの補助を行う。また,賃貸借契約の締結時に連帯保証人が必要な場合に,適当な連帯保証人がいないときは,支援対象者の連帯保証人となる又は利用可能な家賃債務保証業者を確保し自らが緊急連絡先となる
・自ら賃借人となって賃貸借契約を締結した上で,1号特定技能外国人の合意の下,住居として提供する
・所有する社宅等を,1号特定技能外国人の合意の下,当該外国人に対して住居として提供する
・情報提供する又は住居として提供する住居の概要(確保予定の場合を含む)
「生活に必要な契約に係る支援」
・銀行その他の金融機関における預金口座又は貯金口座の開設の手続の補助
・携帯電話の利用に関する契約の手続の補助
・電気・水道・ガス等のライフラインに関する手続の補助
参考:「特定技能所属機関による支援計画変更に係る届出」法務省
生活にかかせない銀行口座の開設やライフライン開設などのサポートも含まれています。
④生活オリエンテーションの実施
1号特定技能外国人が日本で円滑に過ごせる様に、日本のマナーやルール等を説明します。
・本邦での生活一般に関する事項
・法令の規定により外国人が履行しなければならない国又は地方公共団体の機関に対する届出その他の手続に関する事項及び必要に応じて同行し手続を補助すること
・相談・苦情の連絡先,申出をすべき国又は地方公共団体の機関の連絡先
・十分に理解することができる言語により医療を受けることができる医療機関に関する事項
・防災・防犯に関する事項,急病その他の緊急時における対応に必要な事項
・出入国又は労働に関する法令規定の違反を知ったときの対応方法その他当該外国人の法的保護に必要な事項
参考:「特定技能所属機関による支援計画変更に係る届出」法務省
例として「本邦での生活一般に関する事項」の中身を見てみましょう。
①金融機関の利用方法…入出金や振込みの方法・ATMの使い方など
②医療機関の利用方法等…保険証を持参することなど
③交通ルール等 …歩行者は右側通行、車両は左側通行など
④交通機関の利用方法等…生活圏内の公共交通機関・住居から勤務先までの経路など
⑤生活ルール・マナー…ゴミの捨て方・空き地に無断で入ってはいけないなど
⑥生活必需品等の購入方法等…生活県内のスーパーマーケットなどの所在地
⑦気象情報や災害時に行政等から提供される災害情報の入手方法等など
⑧我が国で違法となる行為の例(大麻,覚醒剤等違法薬物の所持等は犯罪であることなど)
参考:「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」法務省
知らないと日本での生活に困る事ばかりですね!
必要に応じて、引っ越しや健康保険、年金、税などに関する公的手続きへも同行し、書類作成のサポートも必要となります。
⑤日本語学習の機会の提供
1号特定技能外国人は「ある程度の日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力」という水準をクリアして居ます。しかし、さらなる日本語のスキルアップをすることによって、日本で仕事を・生活する上で円滑なコミュニケーションが取れる様になり、特定技能外国人にとっても企業にとってもプラスになる可能性もあります。
「日本語学習の機会の提供」は、日本語教室等の入学案内、日本語学習教材の情報提供、自主学習の為のオンラインの日本語講座の利用契約手続の補助なども含まれます。
⑥相談又は苦情への対応
職場や生活上の相談・苦情等について、1号特定技能外国人が十分に理解することができる言語での対応や内容に応じた必要な助言、指導などが必要です。
必要に応じて、相談内容に対応する関係行政機関を案内、同行するなど必要な手続の補助を行う場合もあります。
⑦日本人との交流促進に係る支援
自治会等の地域住民との交流の場や、地域のお祭りなどの行事の案内、参加の補助などが必要となります。
・必要に応じ,地方公共団体やボランティア団体等が主催する地域住民との交流の場に関する情報の提供や地域の自治会等の案内を行い,各行事等への参加の手続の補助を行うほか,必要に応じて同行して各行事の注意事項や実施方法を説明するなどの補助を行う
・日本の文化を理解するために必要な情報として,就労又は生活する地域の行事に関する案内を行うほか,必要に応じて同行し現地で説明するなどの補助を行う
参考:「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」法務省
1号特定技能外国人が地域社会で孤立することなく、日本人と相互に理解し信頼を深められるよう、特定技能所属機関等が率先して1号特定技能外国人と日本人との交流の場を設けていくよう努める事が大切です。
⑧外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援
特定技能所属機関が人員整理や倒産等による受入側の都合により、1号特定技能外国人との特定技能雇用契約を解除する場合、転職先を探す手伝いや、推薦状の作成等に加え、求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続の情報の提供が必要となります
⑨定期的な面談の実施、行政機関への通報
特定技能所属機関等は、1号特定技能外国人の労働状況や生活状況を確認するため、1号特定技能外国人及びその監督をする立場にある者(直接の上司や雇用先の代表者等)それぞれと定期的(3か月に1回以上)に面談する必要があります。
なお、「面談」なので直接対面して話をする必要があり、テレビ電話などで行う事は出来ません。
⑩過去2年間に中長期在留者等(就労系資格に限る)の受入れ経験等がある事
特定技能所属機関は、1号特定技能外国人に対する適切な受け入れと支援を行う必要があります。
以下のいずれかに該当すること
ア 過去2年間に中長期在留者(就労資格のみ。)の受入れ又は管理を適正に行った実績があり,かつ,役職員の中から,支援責任者及び支援担当者(事業所ごとに1名以上。以下同じ。)を選任していること (支援責任者と支援担当者は兼任可。以下同じ)
イ 役職員で過去2年間に中長期在留者(就労資格のみ。)の生活相談等に従事した経験を有するものの中から,支援責任者及び支援担当者を選任していること
ウ ア又はイと同程度に支援業務を適正に実施することができる者で,役職員の中から,支援責任者及 び支援担当者を選任していること
引用:「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」出入国在留管理庁
支援責任者や支援責任者が欠格事由に該当しないことも基準の一つです。
まとめ
今回は「1号特定技能外国人支援計画」について紹介しました。
健康保険、年金、税などの手続きは慣れていないと日本人でも難しいですよね…。
手続き先までの同行、書類作成のサポートがあると安心です!
POINT!特定技能外国人を雇用するために必要な事とは ①特定技能所属機関の基準を満たす事 ②特定技能外国人と結ぶ特定技能雇用契約の基準を満たす事 ③特定技能外国人への支援体制と支援計画が適切である事 |
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参考:
・「特定技能基準省令の概要」法務省(http://www.moj.go.jp/content/001288453.pdf)
・「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」法務省(http://www.moj.go.jp/isa/content/930004553.pdf)
・「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」出入国在留管理庁(http://www.moj.go.jp/isa/content/001335263.pdf)
参考文献:井出誠、長岡俊行(2020)『「特定技能」外国人雇用準備講座』株式会社ビジネス教育出版社