特定技能外国人を雇用するために必要な事とは?Vol.1:特定技能所属機関
目次
- 1 特定技能を受け入れる事が出来る会社とは?
- 1.1 「特定技能所属機関」になるための基準
- 1.2 ①会社が法令を遵守している事
- 1.3 ②1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
- 1.4 ③1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
- 1.5 ④欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
- 1.6 ⑥外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
- 1.7 ⑧支援に要する費用を、直接又は間接に外国人に負担させないこと
- 1.8 ⑫報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
- 1.9 ⑬分野に特有の基準に適合すること
- 2 まとめ
2019年から導入された「特定技能」制度。
前回までのブログでは「特定技能について」「特定技能と技能実習の違い」
について紹介してきました。
次は
・うちの会社でも雇えるの?
・どんな決まりがある?
・どんな職種でもOK?
等、特定技能外国人を雇う立場の皆様が思う疑問・不安を解消しましょう!
今回は「特定技能所属機関になるための基準」についてご紹介します。
特定技能を受け入れる事が出来る会社とは?
どの会社でも、どんな職種でもOK…と言うわけではありません。
特定技能外国人を雇い入れる基準を満たした会社を「特定技能所属機関」と言います。
「特定技能所属機関」になるための基準
①労働,社会保険及び租税に関する法令を遵守していること |
②1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと |
③1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと |
④欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと |
⑤特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し,雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと |
⑥外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと |
⑦受入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと |
⑧支援に要する費用を,直接又は間接に外国人に負担させないこと |
⑨労働者派遣の場合は,派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで,適当と認められる者であるほか、派遣先が①~④の基準に適合すること |
⑩労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること |
⑪雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること |
⑫報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと |
⑬分野に特有の基準に適合すること |
かなり細かく基準が定められていますね!
この中からいくつかピックアップして詳細をご紹介します。
①会社が法令を遵守している事
特定技能所属機関には、労働関係法令、社会保険関係法令、租税関係法令を順守している事が求められています。
日本で事業を営む上で当然の義務を果たしていない、法令を守らないブラック企業では特定技能外国人を雇用する事は出来ない、と言う事です。
②1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
特定技能雇用契約の締結日より1年以内に、雇用する特定技能外国人が就く業務と同種の業務に従事していた労働者を離職させて居ない事が求められます。
希望退職を募る、退職勧奨なども含まれます。
労働者の中には、外国人労働者はもちろん、日本人労働者も含まれます。
※フルタイムの従業員のみ。
人手不足解消の為に外国人を受け入れる企業が、同種の業務従事者を会社都合で退職させていたら…おかしいですよね。
人件費削減の為に、従業員と特定技能外国人を入れ替えるような事は決して認められません。
特定技能外国人が配属する業務とは違う業務従事者や、自己都合退職、定年退職、懲戒解雇、契約社員が期間満了時に更新を希望しない場合は該当しません。
特定技能雇用契約の締結後に、会社都合の解雇が発生した場合も、基準に達していないとみなされます。
◆特定技能雇用契約 特定技能外国人と特定技能所属機関との間で締結される雇用契約 |
③1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
特定技能雇用契約の締結日前1年以内に、特定技能外国人と技能実習生について、行方不明者を発生させていない事が求められます。
技能実習生制度では、いわゆる「失踪者」の発生が問題になっています。
原因を詳しく調べると、受け入れた企業に法令違反などがあるケースがありました。
このような事実がある場合「実習実施者(受け入れ企業)の責めに帰すべき失踪」として厳しく扱われます。
ただし、適正な受け入れを行っていたにもかかわらず発生した行方不明者については、これに該当しません。
④欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
特定技能所属機関では、次のいずれにも該当しない事が決められています。
・禁錮以上の刑に処せられた者
・出入国又は労働に関する法律に違反し、罰金刑に処せられた者
・暴力団関係法令、刑法等に違反し、罰金刑に処せられた者
・社会保険各法及び労働保険各法において事業主としての義務に違反し、罰金刑に処せられた者
いずれも「刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」がその対象となります。
その他、精神の機能の障害により特定技能雇用契約を正しく行えない人や、破産者、過去5年間に技能実習の認定取消を受けた人、外国人に対して暴行・脅迫・監禁行為、私生活の自由を不当に制限した場合も特定技能所属機関になることは出来ません。
参考:「受入れ機関の基準」TOKYOビザ申請オフィス(https://office-immi-lawyer.com/blog/immigration-law/ukeirekikann/)
⑥外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
特定技能雇用契約を締結するに当たり、外国人又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該外国人と社会生活において密接な関係を有する者が、当該特定技能雇用契約に基づく当該外国人の本邦における活動に関連して、他の者に、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産の管理をされている場合、又は、他の者との間で、当該特定技能雇用契約の不履行について違約金を定める
契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結している場合にあっては、そのことを認識して当該特定技能雇用契約を締結していないこと。
引用:「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」法務省(http://www.moj.go.jp/isa/content/930005307.pdf)
特定技能外国人が「本人や親族以外の人」に名目は何であれ保証金を支払ったり財産管理をされている、不当な金銭を徴収されている事を認識した上で雇用すると、出入国又は労働に関する法令に違反した事となり、5年間は特定技能外国人を受け入れられなくなります。
⑧支援に要する費用を、直接又は間接に外国人に負担させないこと
特定技能外国人に対しては、義務的な支援として、外国人が出入国しようとする空海港への送迎、外国人と日本人との交流の促進に関する支援、外国人の責めに帰すべき事由によらない契約解除時の転職支援のほか、特定技能雇用契約の内容に関する情報の提供、適切な住居の確保に係る支援等の法務省令に規定される支援を実施しなければならず、これらの支援を実施するためにかかった費用については本人に負担させることは認められません。
引用:「特定技能制度に関するQ&A」法務省(http://www.moj.go.jp/isa/content/930006254.pdf)
特定技能雇用契約の内容に関する情報提供や、住居確保に係る支援というのはなるほど…と思うのですが、特定技能外国人の方が出入国する際の空港や港への送迎も支援の一つなんですね。
⑫報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
特定技能雇用契約に基づく外国人の報酬を、当該外国人の指定する銀行その他の金融機関に対する当該外国人の預金口座若しくは貯金口座への振込み又は当該外国人に現実に支払われた額を確認することができる方法によって支払われることとしており、かつ、当該預金口座又は貯金口座への振込み以外の方法によって報酬の支払をした場合には、出入国在留管理庁長官に対しその支払の事実を裏付ける客観的な資料を提出し、出入国在留管理庁長官の確認を受けることとしていること。
引用:「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」法務省(http://www.moj.go.jp/isa/content/930005307.pdf)
特定技能外国人に対する給料の支払は確実で適正なものにする必要があるため、当該外国人に対し、給料支払方法として預金口座への振込みがあることを説明した上で、同意がある場合には、預貯金口座への振込みにより行うことが求められます。
振込み以外の支払方法も可能とされていますが、その場合には、後に入管から支払の事実を証する客観的な証拠資料の提出が求められることがあります。
⑬分野に特有の基準に適合すること
以前のブログでも紹介しておりますが、特定技能は「国内の人手不足が深刻化する14業種を対象に外国人の在留資格を認める新しい在留資格制度」です。
生産性向上や国内人材の確保のための取組を行っても、なお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく制度です。
特定産業分野14業種
介護 | ビルクリーニング | 素形材産業 |
産業機械製造業 | 電気・電子情報関連産業 | 建設 |
造船・舶用工業 | 自動車整備 | 航空 |
宿泊 | 農業 | 漁業 |
飲食料品製造業 | 外食業 |
特定技能2号に関しては、いまのところ建設、造船・舶用工業の2分野のみが該当しております。
現在含まれていない分野でも、14業種と同様に人材不足の状態になり関係機関より必要と判断されれば、
今後分野の拡大があるかもしれません!
まとめ
今回は「特定技能所属機関になるための基準」について紹介しました。
特定技能所属機関になる為に、色々と細かい基準がありますが、きちんと法令等を守ってる会社でしか特定技能外国人を受け入れる事は出来ないと言う事ですね!当たり前の事ですが、基準として明記されていると安心感があります。
NES(ネバーエンディングスピリッツ)協同組合では「特定技能者で働きたい外国人の方」と「特定技能者を採用したい企業やお店」のマッチングをお手伝いします。お気軽にご相談下さい!
参考文献:井出誠、長岡俊行(2020)『「特定技能」外国人雇用準備講座』株式会社ビジネス教育出版社